株式会社駿河屋

「住」からライフスタイルを提案。 駿河屋が家づくりで示す、未来への道標

「衣・食・住」という言葉があるように、私たちにとって住まいは大切なもののひとつ。しかし、なぜ住まいは大切なのでしょうか。墨田区には、住まいに真摯に向き合い、自然素材による家づくりを大切にしている駿河屋という建設会社があります。

「体も心もよろこぶ家」をテーマに、ものづくりの本質を理解しながら、同社が住みたいと思う家をお客様に寄り添って提案をする駿河屋。同社の代表取締役である一桝靖人さんに、豊かな暮らしにつながる家づくりへのこだわりや事業における考え方などを伺いました。

材木業のプロが建設会社に

駿河屋の創業は1657年。墨田区で約370年営む建設会社で、現在代表を務める一桝靖人さんで9代目の歴史ある会社です。初代から続いてきた材木業を、自身の代で建設業に鞍替えさせ、一般建材ではなく無垢の木や珪藻土・漆喰などの自然素材や天然素材にこだわった注文住宅・リフォーム業を行っています。建設会社として本物であることの価値や素晴らしさ、つくり手の思いがお客様に届く建築が評判です。

一桝さんは、大学で建築を学び、大手ゼネコン会社に就職して、いつかは家業を継ぐ決意をしてサラリーマン時代を過ごしました。約10年働いたのち、2002年、先代の引退とともに駿河屋を受け継ぎました。材木業から建設会社として新たなスタートを切った駿河屋。ところが建築士の資格を取得している一桝さんでも、早々に建設仕事が舞い込むわけではありません。そこで、ハウスクリーニング業を始め、住まいについて詳しい建築士という強みを活かしながら、徐々にお客様の信頼を獲得して、内装工事や建設工事を請け負うようになっていきました。

一桝さんは、サラリーマン時代も家業を継いだときも、住宅に対する違和感を常に抱いていたといいます。「いいものをつくる、売るという自負はあったものの、世の中は経済合理主義。いいものだけをつくるだけでは難しく、経済を回していくためには多数の人たちに受け入れられるものをつくらないといけないというジレンマを抱えていました」と心境を振り返ります。

建設業界を改めてみていくと、いわゆる健康住宅といわれる自然素材をうたう住宅でも、実際には求められる成分ではない素材が使用されていたり、木材の産地偽装が常態化しているといった現状があります。こうした経済合理主義に基づいてつくられた住まいが増え、シックハウス症候群など身体に影響を与える住まいが増えてしまったことに、建設業に関わる一人として心苦しく感じてきたといいます。

だからこそ、駿河屋は「自分たちが欲しい家をつくる」ということを大切に、自然素材にこだわり、つくり手の思いも見えてくるような家づくりを行い、お客様それぞれに喜ばれる家をつくることに注力してきました。「私たちのやっていることは経済合理主義から外れた価値観かもしれないですが、駿河屋のこだわりや想いに共感してくださる人たちに、自分たちが住みたいと思う家を届けたいと思っています」。

「私たちが本当に欲しい」と思う家を提案する

駿河屋の家づくりは、自然素材を使用している点が最大の特徴と言っても過言ではありません。「自分の家で使いたいもの」が根底にあるので、一桝さんは自ら産地へ赴き、自身の目で確認できた納得のいく自然素材を採用しています。

木材を例にすると、駿河屋では月の満ち欠けによって伐採時期を選定し、現代の主流である人工乾燥を行わず、昔ながらの手法による天然乾燥によって、木が本来持つ香りや風合いなどをできる限り残した良質な木材を使用しています。

材木ひとつでも、エンドユーザーのもとに届くまでに7、8社の会社が関わるのだそう。一桝さんは、一つひとつの会社を訪れ、誰がどんな想いで取り組んでいるのかが理解でき、共感できる会社との付き合いにこだわり続けています。「林業などは業界的に厳しい状況ですし、いいものだけを求めても商売が成り立ちにくい現状は確かにあります。それでも一つひとつに対して真摯に向き合っている会社様としかお取り引きはしないと決めています」と確固たる意思を示す、一桝さん。

自分たちが本当に欲しい家を追求していくと、つくり手や関係者の想いに触れ、自分自身がいいと思ったものを永く大切に使用していきたい、という思いになるのでしょう。実際に見て、関係者たちの話を聞いて納得できるからこそ、自信を持ってお客様に合った提案ができるようになります。

こうして自分たちが欲しい家を提案し、体感してもらう取り組みのひとつとして、事務所のすぐ裏手に自然素材だけでつくられた宿泊体感型モデルルームをつくりました。住まいに対して自分事化してもらうためにはどうしたらよいか、住まいに愛着が持てるようにするにはどのような情報を届けたらよいのか、そんなことを考えた結果生まれた場所です。宿泊体験だけでなく、レンタルスペースとして地域の人たちにも開放していて、近隣の住民がヨガ教室や料理教室などを実施するために利用をすることもあるのだそうです。

いい影響を与えてくれる家を見極めるには「空気の違いを感じること」と一桝さんはいいます。

「神社に参拝にいったときや老舗旅館に泊まったりしたときに、なんとなく空気が違うなと感じたり、気分がよくなるという経験をしたことがある人も多いと思います。この感覚は大事で、体は余計な不純物がないことをわかっているからこその感覚なのです。現代の住宅やオフィス内は、消臭剤や防虫剤など化学物質に影響を受け、体調不良が常態化している人たちが多くいます。自分のフラットな状態というものがどういうことかわからなくなってしまっているのだと思います」。一桝さんは、家は永く過ごす場所だからこそ、自分にとって心地よい家を選択できるようにしたいと思っています。

幸せに暮らせる家づくりのヒントは、一人ひとりの中にある

駿河屋は家づくりをするうえで、素材だけでなく、お客様一人ひとりが家づくりに関わってもらえる土台づくりを大切にしています。そのひとつが、ヒアリングシートです。
親だけでなく子どもも含め、家族全員にヒアリングシートの記入をお願いし、一人ひとりの考えを引き出したうえで、家族会議で活躍するツールとなります。「駿河屋では、全員に参加意識を持ってもらうためにヒアリングシートに力を入れています。子どもも親御さんもみんなの思いを共有してもらうことで、よりよい家づくりを目指すために大切にしている工程です」。

また、駿河屋では「つちからの会」というコミュニティ運営を行っていて、例年、主に千葉県内でお米や野菜づくりなどの農作業を行う「田んぼ体験学校」という企画を実施しています。社員研修を兼ねているので、一桝さんはじめスタッフの参加はもちろん、駿河屋の考えに共感した方や住まいの購入を検討する方たちが気軽に参加できる企画です。

画像提供:株式会社駿河屋
画像提供:株式会社駿河屋

建設会社が農業に関わる機会をつくっているのは「ものづくりの原点は、農業にある」と一桝さんは考えているからなのだそう。「宮大工さんは副業として農業を営む人も多くいます。私たちが使用する木材は『土』の恵によってできたもの。0から1をつくるというものの本質が農業にはあると思っています。つくられるもの、つくり手への感謝の気持ちなどを土に触れることで感じてほしいと思い、実施しています」。

一桝さんがこうした活動を行う背景には、祖父から聞かされてきた言葉が影響しているようです。「祖父はいつも『つくったものには命がある』と話していました。私の子どもの頃は、両親がものづくりをする職人という友人たちも多く、そんなものづくりのまちである墨田区で過ごす中で、自然とものづくりの精神を学んでいたのかもしれません」と話す、一桝さん。

農業を体験することで得られる気持ちや行動は住まいも同様で、時間をかけてできたものへの感謝の気持ちや愛着が湧く過程には、自らの経験によって学ぶことが大切であると考えています。「住む家に魂を吹き込むのは私たちの仕事ですが、住宅だけに囚われることなく、姿勢としてこれからも大切にしたい活動です」。

自分はどのような暮らしが心地よいと感じるのか、どんな人たちが家づくりに関わっているのか、一人ひとりがつくり手の想いに触れたり、自ら体感したりすることで、幸せに暮らせる家を見つけられると、駿河屋は考えています。

駿河屋のSDGs

駿河屋では、かねてから持続可能な家づくりをするためにさまざまな取り組みを行っています。「決して時代の流れでSDGsを意識したわけではなく、お客様が永く住みたい家をつくることを追求していたものが、結果的につながっているのだと思います」と話す、一桝さん。

・地域の子どもたち向けに木を使ったものづくり体験教室や現場体験などのイベント

・天然資源の活用と再利用を行う無駄のない家づくり

・社内クリーニング、施工現場クリーニング時に使用される洗剤には、自然由来のものを採用

・現場で使用する電気をグリーン電力(バイオマス発電)にする

・断熱、気密、通風を考慮し、過度にエアコンに頼らない住宅づくり

・コミュニティ活動で収穫した畑の野菜の一部を子ども食堂へ寄付

といった取り組みを多数行っています。

「商いをするということは、単に経済を回すというだけでなく社会的責任が生じていると思っています。だからこそ、何ができるのかを考えて実践していきたいと思っています」と一桝さん。

今後はより正しい情報が人々に届くことで選択できるように発信者や影響力のある人たちを増やしていき、駿河屋の考えに共感してくれた取引先様とともに仕事をしていきたいと話します。

さまざまな形で家づくりを追求する駿河屋は、これからも私たちに持続可能な社会をつくり、未来をつくるヒントを届けてくれるに違いありません。

子どもたちへのメッセージ

「お家をみるときは、空気の違いを感じてみてほしいなと思います。リラックスしてなんだか眠たくなるなとか、裸足で歩いても気持ちいいなと感じることが、よいお家のヒントです。木に触れることができるワークショップやイベントもあります。木の心地よさなどをぜひ体験しにきてください!」(一桝)

【イベント情報】

6月に田植え、10月に稲刈りを行う「田んぼ体験学校」や木材の産地を訪れる「伐倒製材見学会」など、毎年、自然体験ができるイベントを開催しています。

ほかにも、月に一度のワークショップ、年に一度の「駿河屋夏祭り」など定期的に地域の皆様と一緒になって楽しめるイベントを実施しています。

イベントの詳細情報は、ホームページやLINEにて随時更新していますのでぜひご覧ください。

HP(イベント情報)→→https://surugaya-life.jp/event/

LINE ID→→「@surugaya1657」

<プロフィール>

一桝 靖人(いちます・やすひと)

株式会社駿河屋 代表取締役

1969年、墨田区生まれ。創業1657年の老舗材木商の9代目。自身の代で材木業から建設業に業種変更し、360年以上続いてきた材木業の知識を経験を活かし、「心も体もよろこぶ家づくり」をテーマに、自ら産地に赴き厳選した自然素材を使用した住宅づくりを行っている。

一級建築士/一級建築施工管理技士/宅地建物取引士